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「30年のラボ経営と事業承継」

第29回神奈川歯科技工ネット研究会


「30年のラボ経営と事業承継」


株式会社コスモデンタルラボラトリー 代表取締役  菊地基次 氏  講演

 

㈱湘南デンタルラボラトリー     渡辺利彰

 

2012年11月16日(金)神奈川県民サポートセンター403号室において,神奈川歯科技工ネット研究会・第29回定例会が開催された.先日の雨で富士山の中腹まで冠雪し,本格的に寒い季節となって参りましたが,菊地氏の人生の歩みを拝聴する機会とあり会員の方々が続々と会場入りした.歯科技工士としても大先輩である菊地氏の,技工学校卒業から現在70歳を迎えるまでのお話が始まった.

 

菊地氏の勤務歯科技工士時代P1050939.JPG

横浜歯科技術専門学校を卒業後,東京の大手医療法人(宮田歯科)に勤務され,歯科技工の仕事はもとより,技工士や衛生士の募集業務を任されるなど,経営者である院長にとっては信頼のおける社員であったようだ.

 

13年間の勤務期間中に当初3ケ所の診療所で歯科医師以下総勢約70名だったものが,診療所が7ケ所に増え,歯科医師約100名,技工士約80名,衛生士・事務合わせて総勢400名程を擁する規模になるなど躍進目覚ましく,この後開業することになる菊地氏が貴重な経験をされた大切な勤務時代だったのかなと思った.

 

院長の代替わりで退社開業を決断する.思うに経営方針が違えば従業員としては,この経営者に付いて行けるか行けないか迷うところが多いと思う.これはどこの世界でも共通なのではないでしょうか.

 

30年間のラボ経営

技工士6名,集配2名で共同経営の有限会社を立ち上げたが,2年ほどで共同経営がうまくいかないと判断し,共同経営を解消する.社長本人が営業集配・技工をこなし寝る間もなく「蟻地獄の時代」という話であった.窮地の菊地氏を救ってくれたのは他ならぬ友人の手伝いだったということをお伺いし,やはり「持つべきものは友」であると感じた.

 

開業5年で軌道に乗りはじめ,1992年に銀行の紹介もあり新社屋を購入,作業環境を考慮し当時50数万円もする業務用大型集塵機3台や高周波誘導加熱式真空圧迫鋳造機CL-I95エンプレス機器等々,技工ソフト「ラボコン(Yuzu System)」を早々と導入し,時代の最先端を行く設備を誇ったそうです.社員達から声が上がり「私達はすぐに辞めることはないから」との言葉で社会保険制度に加入,いち早く社内環境も整備された.

 

1991年には勉強会「DRC」の発足に参加し,1998年に持ちまわりで会長を務めた時に「技工界の若きリーダーを育てる」との理念のもとに新人研修会等も熱心に行われた.有楽町マリオンにて桑田正博先生を講師に招いた新人育成シンポジウムでは250名の座席を満席にされたそうである.輝かしい実績である.

 

開業10周年,20周年の節目において社員,又そのご家族や恩師らに感謝を込めて記念パーティーを開催された写真を見せて頂いた.当時の横浜プリンスホテル(跡地は現在巨大マンション-Brillia City横浜磯子)の洒落たパーティ会場を借りて社の記念を祝うなどということは斯界には例が無かったそうである.

 

P1050940.JPG

常に社員のことを考え,福利厚生や労働環境など「働きやすい職場」を意識されて来たことが如実に感じられた.

 

以上,菊地氏の辿って来た道程からは,やはり人それぞれに「小説より奇なる人生ドラマ」があるのだということがありありと伝わって参りました.

 

事業承継

30年を期にラボ経営の一線から退く考えで,会社の20周年目の時に事業承継の10年計画を立て「私は自分の子供には継がせない」と宣言する.

 

ラボ経営を継ぐ次の世代に借金をあまり残さず,スムーズに事業を承継したい.年度内には結論を出したいと思っているが,参加者の意見を聞きたいとの事でした.

 

 

参加者感想・発表

参加者である経営者の方々に,自分自身が常に考えていること,事業承継に対する思いなどを語って頂きました.

 

・ほとんどの経営者の方が朝,社員の誰よりも早く出社して

   事業所の鍵を自分で開けられているこだわりがある(象徴的ですね).

・どなたも借金を次世代に残したくない(生命保険に加入し,なにかあったら清算).

・自身がやれるうちはトコトン技工を続けたい(社長自らの手で).

・次期社長は人柄で選ぶというのも一つある.

・銀行も認めてくれる人材でなければ後継者として難しい(いわゆる信用).

・優秀な社員には役職をつけ,次期後継者として育てている.

・一生懸命働いている社員達に,家の一軒でも建てさせてあげたい.

・会社は私のものではなく,社員のものであると考えるのが妥当である.

・危機管理意識を常に持ち社員一丸となり頑張っている.

 

会社の規模や社風によって,それぞれ事業承継に対する考え方ややり方は違うと思うが,今回の勉強会はいずれはやってくる事業承継について,参加者皆様それぞれの参考になったのではないでしょうか.

 

私の勤務する会社も2年ほど前に突然の事業承継があり現社長の苦労を見て参りました.菊地氏におかれましてはスムーズに事業承継が出来ることを願っております.

 

どこの経営者もいずれは直面する問題であり,一会員として興味深くお話を伺うことが出来ました.ありがとうございました.

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