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「第30回神奈川歯科技工ネット研究会の株式会社 西山歯研見学会」に参加して

第30回神奈川歯科技工ネット研究会

 

「第30回神奈川歯科技工ネット研究会の株式会社西山歯研見学会」に参加して

-発展途上にある組織ラボ経営者の理念に学ぶ-

Reporter 土田康夫 (㈱横浜歯研)

 

 



  平成25年1月18日(金)西山歯研見学会が開催された.

  珍しい積雪により足元のわるいなか,午後6時に小田急線「向ケ丘遊園」駅より徒歩10分程の西山歯研に会員20人が集合した.

 

 

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写真提供 ㈱西山歯研

 

  初めに気付いたことは,出迎えて下さった女性社員さん達の大変明るい雰囲気にホッとしたことです.厳冬の夕刻,駅より徒歩で来た冷えた身体や心までもが一気に暖かに感じる程素敵なお迎えでした.

 

 

-3S活動を全社で取り組み実践中-

  早速20人程の広さの研修室に案内され西山社長の講演を聞くことになる.

  3Sとは,整理・整頓・清掃 の3つの頭文字の略で,この3項目の徹底の結果が2S(清潔・躾)に繋がり5Sとなる.3S活動の実践は「東京3S研究会」と言う異業種の4社が集う研究会から始まった.4カ月に一度,毎月順番でホスト会社が決まり他社のメンバーが訪れチェックと評価をし合います(表1).お互いに切磋琢磨することで向上を図る仕組みと仕掛けを知り,大変シビアな方法に驚かされたのでした(表はフォーマットの一例).

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表1

 

  3S活動の実践内容の中で私がまず始めに感心したことは,西山社長自身による社内トイレの清掃です.会社内のトイレは社員がいつでも気持ちよく使えるように自らが先頭に立って素手で清掃していると聞かされたからです.“中途半端な気持ちでやってはいない”と言っている社長の心の内が強く伝わって来るものがありました.

たかが“片付け掃除“,“雑用?”と一般的には軽く思われがちですが,3Sの有益性について彼の話の中に出てきた裏付けの実証例として数々のエピソードを以下に示します.

 

[その1]

松下政経塾を皆さんもご存じと思いますが,政治家を育成する松下幸之助の興した私塾です.そこの塾頭の上甲 晃氏が某所でのインタビューに答えるコメントの中で「政経塾で政治家を目指す塾生諸君は政治学の高度な最新の知識の勉強をすることが政治家になる道だ」と考えているんです.そこで幸之助は言います.「毎朝早く起きてしっかり掃除することが一番大事な勉強や」と,「自分の身の回りのことも整えられない人間が国を治めることなどできない,日本の国を経営することはできない」とネ.さらに,「経営も一緒やと,難しい経営の理論を議論する前にしっかりした掃除が出来ている会社になったら,たちまち経営は良くなる」と松下幸之助が言っているんですね.それは知識ではないんです.どんなに色々なことを知っていても,人間としての基本ができてない人が一杯います.だから頭を育てる前に心を育てること.心は実践によってしか育たないんです.

 

[その2]

高知県の高校で野球やスポーツの強い明徳義塾の関係者の話です.運動部が本当に強いときは,グラウンドや練習場が極めて掃除が行き届いているそうです.ところがグラウンドに草がいっぱい生えている時はやっぱり野球部が弱い.なぜか.草を抜く間があったら練習した方が良いという理屈です.しかし,整わない心でなんぼ練習してもうまくならない.まず,自分の練習場をきちんと綺麗に整えた状態で練習すると練習に身が入る.結果としてよい成績に繋がるんですね.環境を整えるということは心を健全に整えることなんです.

 

[その3]

経営の基本は整理・整頓・清掃にある.iPhoneやiPad等の世界的なヒット商品を世に送り出し,型破りな経営者として有名なアップル社の故 スティーブン・ジョブズ氏はアップル社に戻って最初にやったことは,社内の徹底的な整理整頓だった.と,アップルに16年間在籍しシニアマネージャーまで勤めた松井 博氏が著書の中で述べている.その結果は経営不振であったアップル社を見事に甦らせたのである.

 

[その4]

俳優・タレント・世界的な映画監督として知られるビートたけしさんの話である.インタビューを受けている中で,成功の理由を尋ねられた時の言葉として「浅草時代の下積みの時に,師匠から託った“自分の使った便所は自分で綺麗にしてから出ること” 他の人と違ったことをした事と言えばそのくらいで,特に才能があるとか頭が良いとは思ったことがない」との話だった.

 

[その5]

ニューヨークの地下鉄の犯罪はレイプや殺人等で有名だったが,この犯罪を激減させた要因が車輛のガラス窓を直し落書きを消し,地下の駅や車輛内を徹底的に綺麗にした為だとの話は有名なところだ.

 

[その6]

年間累計納税額日本一の高額所得者,斎藤一人さんの言葉として,「『掃除は人生を輝かせる最高の神事』,そして坊主の修行も板前の修業もみんな掃除から始まるこれ基本なり結局経営も同じです.」と…….

 

 

西山歯研では3S活動を人材育成の柱と位置付け徹底向上を図るための仕組みを作り浸透させている.そして,トップ自らが率先垂範することにより社員全員が一丸となって挑戦しているところの熱い気持ちが充分に汲み取れた.

 

 

  講演後,20人程の技工ネット会員それぞれが各技工作業場へと入り,見学と説明をして頂く.やはり西山社長の強い思い入れと理念が行き届いている感じを随所に見ることが出来た.サンクスカード活動による社員同士の感謝の気持ちの“みえる化”も印象に残った.

  昨今の厳しい歯科医療界を思うと,ラボ経営者の頭はいつもフル回転.自社技工物の開発や営業努力は当然のこと,顧客満足度を念頭に置きながら品質管理,料金や納期にも知恵を絞り,全てに最善の判断を下し,最大の成果を願い努力を継続する…….

  しかし,今回の見学会ではそうした経営のノウハウも不可欠だが同時にもう一度足元を見る必要性があるのではないかと考えさせられた.“急がば回れ”ではないが着実に一歩一歩まずは環境を整え心を整えることの大切さを訴えている経営者の横顔がはっきり見えてきた.そして今回,その総てを隠すことなく見せて下さり話して下さった西山社長をはじめ,社員スタッフの方々に感謝とお礼を申し上げます.

 

 

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