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「『3Dプリンターを活用した歯科技工』プロセス・パフォーマンス評価」

第46回神奈川歯科技工ネット研究会レポート

 

「『3Dプリンターを活用した歯科技工』プロセス・パフォーマンス評価」

株式会社 横浜トラスト歯科技工研究所 代表取締役 藤田耕介 先生 講演

 

レポーター: 井上 拓 ( (株)横浜歯研 鋳造課 )

 


 

fujita.jpg去る2014年9月28日,第3回 平成26年度鶴見大学歯学部歯科技工研修科セミナーが鶴見大学会館にて行われた.こちらの催事へは昨年に続き二回目の参加であり,今回も午前中のテーブルクリニックから午後の講演会『ちょっと先の未来』まで盛り沢山の内容でとても勉強になった.講師の藤田先生は鶴見大学歯学部歯科技工研修科同窓会(技修会)会員であり,今回の藤田先生の講演が第46回神奈川歯科技工ネット研究会を兼ねて併催するということであった.参加者は123名.

 

歯科技工業界だけでなく,社会一般でも「3Dプリンター」という言葉は最近どこでも聞くようになった.今回の内容は「3Dプリンターを活用した歯科技工」ということで,これを技工にどう取り入れるのか,私自身とても興味がある内容であった.技工業界でもCAD/CAMを導入したデジタル化が急速に進んでおり,小臼歯のCAD/CAM冠が保険導入されたのも最近の話である.急速に進んでいるデジタル化のツールを今後使いこなさなくては取り残されてしまうものと思う.さらに3Dプリンターは最近注目を集めているツールであり,すでに臨床に取り入れている藤田先生の話はメリットのみならず今後の問題点にも触れていて,導入を考えている人には大いにヒントになる話であった.

 

歯科技工業界において,1980年代では一から作るハンドメイドが主流であったが,2005~6年頃から自働機械化が進出してきた.2009年頃からは急速に進み,ノーベルバイオケアの幕張プラントが開設されたのもこの頃である.今までは労働集約型産業と言われ人間による労働力が主とされてきたが,この頃から資本(CAD/CAM機器等への投資)を用いてモノづくりを行う資本集約型産業へと移行して来ている.年々歯科技工士が減少している中で資本集約型産業への移行は必然であり,如何に人件費をかけずに生産していくかがこれからの時代の課題である.

 

中小企業庁の平成24年度補正「ものづくり補助金(ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金)」2次公募に応募.見事採択され補助金を給付されたことで3Dプリンターを導入することを決めたという(採択テーマ:3Dプリンターを活用した歯科技工の生産力強化プロジェクト〔受付番号14210372〕).しかし,まだあまり歯科業界内で広まっていないものを先駆けて取り入れる進取の精神に,第一線で会社を経営している藤田社長の姿勢と熱い思いが伝わって来た.

取り入れた理由として以下のことが挙げられた.

 

・業務効率を上げること

・作業時間の短縮

・製品の均一化,ばらつきをなくす

・デジタル環境の経験値を増やすため

・情報ネットワークの構築を図るため

 

私自身,作業効率向上,時間短縮は常日頃から考えていることであり,CAD/CAMを導入してどのように変わるのかに非常に興味があった.ただ単に人員を増やせば効率向上・時短に繋がるのか……すると今度は製品のばらつきが起こる.これを直すのにさらに時間がかかってしまうこともある.こうした問題点をCAD/CAM・3Dプリンターで解決していけるのではないだろうか.

 

RIMG1833.jpg

導入した3Dプリンターは「DWS-3D出力機 028J Plus」

少量の樹脂を入れるだけで造形を可能にする“吊り上げ方式”を採用.最大の特徴は造形方式が従来のプロジェクター方式やプロッター方式とは違いガルバノスキャナー方式であるということ.

 

ガルバノスキャナー方式とは……

 

極細レーザーを2枚のミラーで精度を保ちながら高速で光軸を動かす為のシステムです.プロジェクタータイプと違い多種多様の造形設定を可能にするガルバノシステムは造形スピード・スライスピッチ・Z軸・XY軸ハッチング・アウトラインなど,様々な設定の変更が出来ます.設定を変えることにより,造形不良等の防止や造形時間の短縮なども可能.設定が自由に出来る為,数多くの樹脂を使用することが出来ます.これは造形機をフル活用する上でとても重要な事につながります.

 

出典: DWSホームページより

 

出来上がった造形物をアルコールに漬け,15分間紫外線照射器で二次硬化させる.一般的な光造形はこの二次硬化が必要とされている.その後,模型に合わせ適合チェック.必要であればワックスでデザイン不足を補いリン酸塩系埋没材で埋没・鋳造.扱うものが樹脂なので取扱にそんなに気を使う必要もないという.吊り上げ方式で行うため樹脂の無駄が少なくなるが,造形前の作業としてサポート体を立てなくてはならない.サポート体から吊り上げられていくので義歯の維持装置等では吊り上げ方は難しい.

 

材料費は専用の樹脂が1ℓで7万9800円.クラウン一本/0.4グラムとして一本あたり30円程度.樹脂を入れるアクリルトレイが1万9800円.ただし紫外線を下から照射していく構造であるため白く濁って変色していくために定期的な交換が必要とされる.これが大きな経費となる.

 

今回のお話は,実際に3Dプリンターを臨床に取り入れている具体例であり,技工業界にもこんなにも本格的にデジタル化が進んでいるのだということをあらためて身に染みて感じた.3Dプリンターの利点のひとつは鋳造欠陥で再製作を余儀なくされた時に低コストで造形出来ることである.が,しかしこれはクラウン・ブリッジにおけることであり,私自身は義歯を製作しているので維持装置なども精度よく低コストで造形することが出来ると,今後歯科業界においてさらに活躍の場が増え,さらに普及が広まっていくのではないかと感じた.

 

藤田先生の話を聞いて,これからの時代はラボにCAD/CAMが設置されているのが当たり前になってくるのであると感じた.デジタル機器は進歩が急速で,陳腐化も早いサイクルで回るために,導入時期や導入機器の選定もとても重要である.

3Dプリンターにはまだ解決すべき問題がたくさんある.今後どのように改善・進歩するのか,そして臨床の場でどのように活躍出来るのか…….これからも最先端の歯科技工を学んでいきたい.

 

鶴見大学歯学部歯科技工研修科と講師の藤田耕介先生に感謝いたします.

 

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鶴見大学歯学部歯科技工研修科同窓会「技修会」

 

鶴見大学歯学部歯科技工研修科〔講座案内〕

 

㈱横浜トラスト歯科技工研究所

 

シーフォース株式会社(DWSシリーズ取扱代理会社)

 

 

 

 

1.労働集約型産業

これは多くの場合は機械化が難しい分野で,単純労働力の提供が収益の源泉となっている産業.例えば飲食業・人的なサービス業・運送業などが代表例となる.一人あたりの資本投下額が小さく,売上げに占める労務費の割合が高い.

 

2.資本集約型産業

資本投下を行い,労働力よりも機械や設備の力で生産したりサービス提供をするような産業.メーカーや大型商業施設などが代表例.一人あたりの資本投下額が大きく,売上げに占める労務費の割合は下がる.

 

3.知識集約型産業

知的労働力や,研究開発によって会社としての知識や技術力を高めることが収益の源泉となっている産業.投資ファンド,コンサルティング(ファーム),ファブレスメーカー,製薬会社が典型例.一人あたりの資本投下額はさほど大きくはならないが,成功している例では一人あたりの収益力は高くなる.

(起業ポルノ)様ブログより改変・引用

 

 

 

「巨大物流ターミナルを探検する」 研究発表報告 「チェアサイド用CAD/CAMシステムの現状と今後について」
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