「歯科技工業界への3Dソリューション」研究発表報告
「歯科技工業界への3Dソリューション」
― 歯科技工所経営~歯科用3Dシステムを今後どのように展開するべきか? ―
株式会社 横浜トラスト歯科技工研究所 藤田耕介
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毎月1回のペースで開催して来た研究会も,13回目を数える今回より若干規模を拡大し,本来の小グループに分かれたグループディスカッションの形式により行われた.2011年4月15日(金),神奈川県民サポートセンターにて標記テーマで研究会が開催された.今回は石田卓也氏(株式会社豊通マシナリーデジタルソリューション部)を招聘し,「歯科技工業界への3Dソリューション」をテーマに,各地より18名が参加した.石田氏はセンサブルデンタルラボシステムを概要・販売実績・基本性能(スペック)・導入費用・今後の展望の5つのポイントから解説した.
センサブルデンタルラボシステムは,米国に本社を置くセンサブルテクノロジーズ社により開発されたジルコニアからキャスト用パターンまで加工素材に幅広く対応した歯科CAD/CAMシステムである.本システムは,既に一般工業界で高い評価を得ていた3D技術を歯科用にカスタマイズして,2006年から市場に投入し,デンタル事業を開始した.独自のユーザーインターフェースで稼動する【Haptic Device(フォースフィードバックデバイス)】(3Dマウス)を中心に,三次元スキャナ
【Smart Optics(Germany)/Solutionix(Korea)の2社】と3Dプリンター【3D Systems(USA)】をインテグレーションし,㈱豊通マシナリーが国内販売している歯科CAD/CAM装置である.
国内の販売実績については2009年販売開始後約2年経過した現在,デザインCAD 19台,スキャナ27台,3Dプリンター6台という状況である.特に本年1~4月間で昨年度トータルの販売実績と並ぶ勢いであるとの報告があった.
システムの中核をなす3Dモデリングデザインソフトウェアの対応症例は,クラウンブリッジ・インレー・金属床・ジルコニアコーピングと,歯科技工におけるあらゆる分野をカバーしている.リリース時期は現在未定であるが,現在開発中の「バーチャル咬合器」は汎用性が高く今後に期待できるとのことであった.スキャン所要時間はクラウンブリッジ・金属床共に5分,デザイン所要時間はクラウン12本/h 金属床3床/h であるが,熟練オペレーターは無理なくこれ以上の作業が可能であることも併せて述べた.ジルコニアコーピングの対応としては神奈川歯科技工ネット研究会会員企業である株式会社コアデンタルラボ横浜(陸 誠社長)所有のGM-1000と連動し,現在は最終的な精度上の問題点を詰めているところであるとの報告があった.アウトプット所要時間は単冠FCKで200個/4h 金属床15床/8hの製作が可能であると説明があった.
導入費用に関しては,3Dスキャナ・デザインCAD・3Dプリンターのフルシステムリース料(保守点検料含む)でトータル約60万/月ということであった.3Dプリンターを除けば約25万/月のリース料であるが,これらのイニシャルコストにランニングコストを加算した場合,クラウンWAX-UPと比較した1本あたり製造原価は240円以上になるのではないかと試算した.
今後の展望として,生産工程の平準化※や職場環境の向上など従来の歯科技工作業で確立し辛かった部分を改善出来るのではないかと提言し,デジタル化による営業範囲の拡大については,ネットワーク化によって世界と繋がることも可能であるとの見解を示した.また保険技工に対応することを想定した場合に,高い稼働率を求められるがその場合の品質安定においても機械化による優位性を強調した.また本システムはオペレーター技量によって自社の強みをCADでも発揮できるとし,微妙な設計など他社と差別化できる部分をさらに発展させて行く事が重要であるとした.
◆神奈川歯科技工ネット研究会は3部構成となっており,前半は演者による討論材料の提示,後半は各グループに分かれてテーマに沿ったグループディスカッション,そしてその後全体の前で各グループ毎の結論を発表するという運営形式である.
今回は「歯科技工所経営~歯科用3Dシステムを今後どのように展開するべきか?」というテーマであった.以下はグループ発表者によるその報告内容を要約したものである(発表順).
第3グループ発表者 田中文博氏(株式会社コアデンタルラボ横浜)
結果的に第3グループはまとまった結論に至りませんでした.経営規模が小さいラボでは,最終的にこのようなシステムを維持していくことが可能かといった部分では,今後の課題が明確になったということでしょうか.現在は代表的な数社がスキャナとソフトをセット販売し,海外は(データの)オープン化に向かっているといった状況です.今後のCAD/CAMに関してはバージョンアップ等の問題も視野に入れ,導入基準をどこに置くかということが問われてくると思います.そして,顧客が加工センターを選択する時代に入るのは間違いないでしょう.まだ僅か1か月程ですが,自社のGM-1000とセンサブルラボシステムがジルコニア加工で連動していくといった流れの中で,製作工程や精度における要望や調整に対して非常にレスポンス良く対応して頂いていることをご報告致します.
第1グループ発表者 早川浩生氏(横浜市立大学附属病院歯科・口腔外科技工室)
第1グループには歯科CAD/CAMに精通された仁科匡生先生(元神奈川歯科大学附属歯科技工専門学校)と歯科CAD/CAM事業の先駆者であり,また先月IDS(国際デンタルショー/ケルン)に行かれ視察した福岡正雄会長(株式会社ベルザ)のお二方が参加されていたので,ディスカッションというよりは,むしろこれからの方向性がどこに向かうのかということについてお二人の話を拝聴しておりました.その中から特に中国や韓国歯科技工業界は世界市場を相手にして営業攻勢をかけている現状に対して,現在日本は手をこまねいて躊躇しているといった状況であるということ,またCAMにおける所謂コツの蓄積や人材開発面の充実が重要であるといった示唆を頂きました.これからの歯科技工士は歯科技工作業をするだけではなくソフト開発(基礎的言語の駆使)から関わることが出来る様な人材を世の中は求めているといったことも傾聴させて頂きました.
第2グループ発表者 山室拓也氏(株式会社デンタルアクト)
今後はデジタル化の波によってラボ経営形態も確実に変化していくと思います.歯科技工作業の中心にCAD/CAMが据えられるという着地点は鮮明化しているので,あとはそのスタイルへのアプローチをどのようにするか?といったことではないでしょうか.第2グループも色々な意見が出ましたが,ラボのグループ化と装置の共有化を今後具体的に話し合わなければならない時期が近々に来るといったことが議論の中核でした.そして同時にそのことに対してスピード感が問われているというのが現在の結論というか見解でした.
・話題を提供して下さいました株式会社豊通マシナリー デジタルソリューション部 石田卓也・吉田賢造の両氏に御礼申し上げます.
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[ソリューション【solution】]
1 解明.解決. 2 溶解.また,溶液. 3 業務上の問題点や課題を解決するための手段,または主にそのために導入される情報システム全般を指す.システムを構築することをシステムインテグレーションと呼ぶ.
[平準化]
製造業における平準化(へいじゅんか)は,色々な種類の製品を均等にばらして生産すること.同じものをまとめて生産するロット生産と対比して考えることができる.