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「日産自動車株式会社追浜工場見学に行く」

神奈川歯科技工ネット研究会 日産自動車株式会社追浜工場見学会レポート

 

「日産自動車株式会社追浜工場見学に行く」

 

レポーター:傳寳弥里( アルモニア 代表 )

 


 

去る平成25年8月30日(金),日産自動車株式会社追浜工場にて工場見学会に参加した(参加人数は15名).残暑の厳しい昼下がり,久し振りに京急追浜駅に降り立った.筆者の母校が追浜にある.射すような日差しを受けて,高校時代,友達とおしゃべりをしながら歩いた駅から約20分の道のりと水泳部での楽しく辛い日々を思い出した.追浜工場は夏島町といって母校追浜高校のすぐ近くにあるので,追浜駅から歩いて行こうと思っていたが,噴き出る汗にその気持ちはすぐに萎え,タクシーで向かった.迷いなくタクシーに乗った行為と車窓からみる街並みの変化から,あらがえない時の経過を感じた.

 

P1060341.JPG工場見学の集合場所となったゲストホールでは,実際のレースで使用された車など,数台の車が展示されていて見学開始の時間までを楽しく待つことが出来た.ほどなく定刻の13時となり,ゲストホールの二階に移動し約90分の見学会が始まった.

 

案内役の女性の完璧なまでのアナウンスの後,ビデオにて日産自動車株式会社の紹介などのレクチャーを受けた.日産自動車では「同期生産」という生産システムを用いている(NPW:Nissan Production Way:日産生産方式).これは全ての工程が順序と時間を守って作業していくシステムで高品質な車を効率的に短い納期で納品することを可能にしている.筆者がショールームで車を購入したとする.すると,その時点で納品までの全ての工程とその作業終了予定日(4日)が決定し,オンラインで各工場等に伝えられる.そして発行された技工でいうと指示書と技工録が完成するまでの間,常に製品と共に移動する.製造業の工場というと作業員は一日中,同じ作業を同じ姿勢でするイメージがあるが,違っていた.勿論,一工場で生産される機種は2~3車種と限られているので作業事態が大きく変わるものではないが,注文が入った順に生産するので通常の車(レシプロエンジン車)と電気自動車(EV)が同じラインでランダムに流れてくるので注意が必要だ.

 

また分単位で決められている作業は,作業員の急な体調不良や機械の不具合等が生じるとすぐにストップ出来るようになっている.作業員はグループ毎に分かれていてグループ長がグループのメンバーのフォローに入るようになっているが,自分の急な腹痛などで全ラインが止まるのかと思うと・・・.しかし会社側も過酷な作業を強いるだけではなく,作業員の体への負担軽減を考え,作業員の身長に合わせて作業のラインが上下するようになっていたり,動線の移動が少なくて済むよう作業に必要な部品は全てオートメーションのロボットで運ばれてくるようになっていたりする.工場内を歩いていると地面に赤や黄色の線が引かれていて,その上を部品の入ったタイヤ付きの箱が動いていく.人が歩いて部品を運ぶことはない.足元を走っていくので注意を促すために音楽がなるのだが,これがディズニーランドのエレクトリカルパレードのテーマ曲で,作業員の方々はディズニーランドに遊びに行っても仕事を思い出してしまうだろうなと少し可哀想に思った.

 

運転席の計器類(コックピット・モジュール)組み立てなど,工場内にはサプライヤー(部品供給元)として日産自動車の関連協力会社の社員も働いているのだが,作業員の帽子の色で見分けられるようになっている.工場内で一緒に見学していた会員達が注目していたのはヒューマンエラーをいかに未然に防いでいるかの方策と起こってしまった時の素早い対処方法である.レポートにはとにかく細かくチェックを入れる事,文字で残すことが基本であるが色々と工夫がされていて個々の作業員が提出した改善提案書に見入っていた会員もいた.組み立てラインでは16時間かけて1台が完成する.完成した車両はフリーローラーテストといって,作業員が車に乗り込んで実際に走行,法定項目やブレーキなどの検査を行い完成となる.

 

生産ライン動画

 

組立作業ラインの工場見学の後にバスに乗り敷地内の埠頭に向かい,車窓からタンカーと出荷待ちの車の列を見学した.日産自動車はルノー株式会社(フランス)資本提携を行なっているので,輸入されたルノー車が日本の規定に合っているかを確認する作業も行っていて,その作業は埠頭から近い場所に建っている工場で行っている.こちらも車窓から見学した.敷地内には開発部とテストコース等もあるがそれらは見学出来なかったので残念だった.なお,ここ追浜工場の見学には年間約5万6千人が訪れるとのことである.

 

ゲストホールやバスの中は冷房が効いていて涼しかったが作業ライン工場内は暑かった.筆者たち見学者は汗をかきながら移動いていたが案内役の女性は制服をきちっと着て辛い顔一つせずに歩いていた.プロ意識を感じた.お土産にトミカのミニカー(日産リーフ)を頂き,集合写真を撮り,見学会が終了した.

 

P1060333.JPG

小学生の時に学校の社会科見学で同工場見学をしたが記憶にある工場はもっと暗く大きなロボットが動いて車を組み立てていた.現在の工場は明るくきれいですっきりしていて人が組み立てていた.思っていたものとは違っていた.そして同期生産という生産システムにより受注者の名前が書かれた作業書が完成・納品されるまで製品に貼られて移動していくというオーダーメイド感に驚いた.

 

工場見学の後,追浜にある「魚処 東玉」で暑気払いを行なった.開始が早い時間だったためか,工場見学が楽しかったためか,いつになく盛り上がり楽しい宴となった.

 

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日産自動車追浜工場は東京湾に面した神奈川県横須賀市に位置し、わが国初の本格的乗用車工場として1961年(昭和36年)に操業を開始しました。最新技術の導入に意欲的に取り組み、1970年(昭和45年)には業界初の溶接ロボットを導入。世界でも屈指の自動化の進んだ乗用車組立工場として発展してきました。(日産自動車ウェブサイトより改変

 

工場プロフィール


 敷地面積

 約1,707,000m²

 (総合研究所、追浜試験場、追浜専用埠頭を含む)

 従員数

 約3,100名(2013年4月1日時点)

 

 生産能力

 約24万台/年(残業・休日出勤除く)

 

 生産品目

 日産リーフ、ジューク、キューブ、シルフィ

 

 

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