「メーカーの営業手法と技工営業」
「メーカーの営業手法と技工営業」
-スリーエムヘルスケア株式会社 田中 良道 氏 講演-
代々木デンタルクラフト 冨田 博
去る平成24年4月20日(金)かながわ県民活動サポートセンター会議室301において定例会が開催されました.今回は,「メーカーの営業手法と技工営業」というテーマで,スリーエムヘルスケア株式会社の歯科用製品事業部販売部マネジャー(Lab. Business担当)田中良道氏にご講演頂きました.営業という事で,歯科技工所や歯科技工士自身に置き換えて考えるに,営業に関するノウハウなどは確立したものが無いのではないかというのが現状ではないでしょうか.
技工の営業はただ単に物の売り買いだけの問題ではなく,人間を相手としているものなので,その基礎を知ることが前提として必要です.私自身も営業に興味があることから,自分なりの営業マニュアルを作って当社においても参考にし,技工営業のスキルを社全体で高めていかなければならないと感じました.
以下,講演内容の要旨を羅列の形で箇条書きにしてみます.
1.環境の変化にセールスはどう対応していくか
●環境の変化を感じますか?と「ゆでガエル理論」の解説から,これからの時代はビジネス環境の対応の変化についていかないと取り残されてしまうということ.
●グローバル化,情報の進化,顧客の変化,歯科医院の変化は既に始まっている.
●歯科医師の過剰による医院間の競争激化により収入悪化,患者のDIQや意識の変化で営業を取り巻く状況が変化している.
●医院間の競合,顧客ニーズが複雑化,技工所間の競争激化.
●新商品・新技術のライフサイクルの短縮.
●ニーズの多様化による従来の販促効果が低下.
上記のような環境要因の変化が,歯科業界にもいやおうなしに押し寄せてきている現状をふまえた上で営業の姿勢(方針)の対策を練る必要性をお話された.
●状況の変化に対応するセールス側のアクションをどの様にセールス側は変化すればいいのか?
1.顧客との関係を構築・維持・強化を第一に考える.
2.そのために顧客の問題解決を主眼とする.
3.顧客と自身の関係構築を考慮し複数の提案に要素を分解する.
2.購買プロセスとニーズの開拓
営業には,行動心理と購買プロセスにおいてAIDMA理論を基にしているとのことでした.私はその様な理論などが有る事も知らず営業の基本理論を初めて知りました.
お客様のニーズ=何を求めているのか.状況の変化に対応する.
セールス側のアクションでお客様のニーズに合った提案で早い対応が必要である.
田中先生いわく,「現状に疑問を抱かせるのがポイント」だそうです.
問題点は必ず有るので問題点の摘出,分析する必要がある.
ところで,ニーズとは何か?
なぜ,それが私にとって必要なのか?買う理由と問題点そのニーズを探ることで欲求からニーズに変わってくる.お客様は欲求には気づいているがニーズには気づいていないことが多い.そのことを,色々な商品を例えて説明して頂きました.
当人も気づいていないニーズを形つくる.無関心から再認識,現状満足から現状不満と積極的傾聴法で質問していく.潜在ニーズから顕在ニーズへ引き出すことが大事.歯科医院でも無関心から再認識,現状満足から現状不満を気づかせ潜在ニーズから顕在ニーズへ引き出すことが必要だと田中先生はおっしゃっていました.
3.サービスとコミュニケーション
サービスの現場で顧客を失う理由の60%がサービスの不足だそうです.
●サービスの差別化 3つの方法
① 商品やサービスそのもの高品質で低価格
② 提供方法やその他サービス,スピード,利便性,付随サービス
③ 顧客対応力,安心,信頼,情報提供,理解や共感
差別化のポイントは,他社と比べた時の顧客の視点の違いに差があることだそうです.
●コミュニケーションの目的
相手を理解すること.人は自分のことを知ってほしい.
相手の“真意”,“気持ち”を理解する.お客様のニーズを探る.
●コミュニケーション = 伝える表現力
① 第一印象は5分程度で形成される
② 第一印象にはプラス印象とマイナス印象がある
③ プラス印象ならその後の判断も好意的になる
④ マイナス印象だと4~5時間かけて話すくらいの密度が必要
●コミュニケーションの真髄は聴くこと
「話し上手は聴き上手」=「喋るより喋らせろ」
相手を知るためには,「聴く」ことから始まる
●傾聴の技術は以下のことがあげられる.「話し上手は話させ上手」
① 相づちの技術
② 繰り返しの技術
③ 反射の技術
④ 表現の技術
⑤ 相手の目を見て,スマイルは忘れない
(笑顔の人には安心感,笑顔は人を引き寄せる)
⑥ ペーシング
⑦ ミラーリング
4.提案型営業のスキル
提案営業って何?⇒売れる時代から売る時代,今は選ばれる時代になっている.
「ターゲット顧客を選定し,顧客の真髄を理解したうえでその課題に対する
解決策を提案する活動を通じて,顧客に商品を買ってもらう営業活動」
顧客指向
・ 顧客が持っている課題を理解しようとする姿勢
・ 課題の解決策を提案しようとする姿勢
商品の説明より前に,顧客の課題を知らなければならない.
それにはコミュニケーションが必要になる.
目標設定して売り上げを伸ばす販売を展開し,新規開拓(既存顧客は変化する,常に新規開拓をしなければ業績は安定しない).アプローチ,顧客からの紹介,取引の成否日は全て営業に責任があり,チャンスを物にするには基本的なスキルを向上させる必要がある.
営業にはSPIN(スピン)テクニックという技法がある.
4段階の質問を投げかけ,顧客がそれに答えるにつれ自ら購買ニーズを自覚してゆく質問技法を取り入れたセールステクニックです.
SPINの理論においては,営業の目的は「顧客のニーズを顕在化すること」にあります.私はその様な言葉さえ知らなく営業の極意を知り,浅はかな知識ではプロとして通用しないと痛感致しました.
・4つの質問
質問 |
目的 |
1.状況(Situation)質問 |
顧客の現状を理解する |
2.問題(Problem)質問 |
潜在ニーズを明確にし,気づかせる |
3.示唆(Implication) |
問題の重要性を認識させる |
4.解決(Need-payoff) |
ニーズを顕在化させ,あるべき状況をイメージさせる |
・2つのニーズ
潜在ニーズと顕在ニーズ
・3つの説明(FAB)
特徴(Features)
利点(Advantages)
利益(Benefits)
利点はセリング・ポイント ,利益はバイイング・ポイント
先生は利益を提供してくれる営業員を望んでいる.歯科医院が望んでいることは何かを常に考える.我々が出来ることはより良い補綴物を作るのはもちろんですが,情報を提供してクレーム対応を迅速に行う必要がある.
5.院内セミナーによる開拓
院内セミナーを行うことで,共通の認識が高まり,コミュニケーション向上にも繫がる.
最後にこのような学ぶ場を設けて頂きました神奈川歯科技工ネット研究会とお忙しい中定例会の準備に時間を費やして頂きました運営委員の方々に心より御礼申し上げます.
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AIDMA理論
AIDMA(アイドマ)とは1920年代にアメリカ合衆国の販売・広告の実務書の著作者であったサミュエル・ローランド・ホールが著作中で示した広告宣伝に対する消費者の心理のプロセスを示した略語である。日本語圏において「AIDMAの法則」として、広告代理店の電通等により提唱されたAISASとの比較により知られる。
AIDMAの法則では、消費者がある商品を知って購入に至るまでに次のような段階があるとされる。
Attention(注意)
Interest(関心)
Desire(欲求)
Memory(記憶)
Action(行動)
このうちAttentionを「認知段階」、Interest、Desire、Memoryを「感情段階」、Actionを「行動段階」と区別する。
米国等でより一般的に知られた類似の用語として1920年代に応用心理学の分野で米国のE・K・ストロングが論文中に示したセールスにおける顧客心理の段階のAIDAがあり米国でのマーケティング、セールスや広告営業における用語としてはむしろこちらの方が現在でも世俗的に用いられることがある。
Attention(顧客の注意を引く)
Interest(顧客に商品を訴求し関心を引く)
Desire(顧客に商品への欲求があり、それが満足をもたらすことを納得させる)
Action(顧客に行動を起こさせる)
〔Wikipedia〕より