「3Dプリンタについて」
第35回神奈川歯科技工ネット研究会レポート報告
「3Dプリンタについて」
株式会社 豊通マシナリー デジタルソリューション部 石田 卓也 氏
レポーター:滝沢琢也 (株式会社コアデンタルラボ横浜 クラウン2係 課長)
平成25年7月19日(金)かながわ県民活動サポートセンター304会議室において,第35回定例会が開催された.
今回は株式会社 豊通マシナリー デジタルソリューション部 石田卓也氏をお招きして,「3Dプリンタについて」と題してご講演いただいた.
歯科技工界では2年ほど前から(株)豊通マシナリーがセンサブルデンタルラボシステム(SensAble Dental Lab System)と組み合わせて「3Dプリンタ」事業を展開し始め,現在は,小規模から大規模のラボまで幅広く活用されている.また,最近のメディアでは,話題が無い日が無いほど注目されている「3Dプリンタ」であり,クリスアンダーソンの著書「MAKERS」では第3の産業革命とまで称賛され,少なからずさらなる技工業界への恩恵が期待されている.
石田氏の講演は歯科界のみに囚われず,豊通マシナリーが展開している「ものづくりの業界」全体の内容となり,現在の「3Dプリンタ」需要の要因を「PC環境の向上」「低価格化」「クリスアンダーソンのMAKERSブーム」「オバマ大統領の3Dプリンタ言及」「メディアの過剰反応」と冷静に判断された上で,今年の設計・製造ソリューション展での大盛況ぶりなどから,実用化から10年,これを機に精度などの向上が更に進むであろう事や3Dプリンタビジネスが各社の事業全般を太くするとの展望を交えたコメントがあった.高精度化によりさらなる展開が期待できる分野として,「宝飾関連」「フィギュア関連」「小規模産業」「ハイアマチュア」「精密鋳造」,また医科分野では「再生医療」「人工骨」,歯科ではクラウンブリッジ歯科鋳造」を挙げられていた.ここに挙げられる歯科鋳造とは,一般業界から見ると歯科の精度レベルは特別シビアらしく,単に精密鋳造としてでなく歯科鋳造として区別をしている様である.その他,歯科界における話題では,3Dプリンタで成形することができ,なおかつ口腔内で使用できるレジン「TEMPORIS(テンポリス)」が薬事申請中であることや,CT等のダイコムデータの形状をフルカラー石膏プリンタを使用し製作出来る事などを挙げていた.
質疑応答では,歯科技工に関する直接的な精度の質問などが多く,それ以外では実際の歯科用プリンタの活用内容,全国における普及状況に関する質問などがあった.
筆者もCADデータを3Dプリントしたレジンクラウンを模型上に適合した事があるが,臨床的に使用レベルである事は確かであり,そこからどのレベルで使用するかによって工夫の度合いが変わって来る.やはり「3Dプリンタ」をラボとして適切に使いきるには,メンテナンスも含めたコストを意識し,どの程度(レベル)のオーダーで使用するのか?などのさらなる展開を模索しなくては,他のシステム(切削機器など)との比較を行った場合の優位性を活用できないまま,ラボのオブジェとなってしまうのではないだろうか.
まさに日進月歩の「3Dプリンタ」であり,当面は新たな情報から目が離せない状況が続くものと思われた.
意外と知らないオバマ大統領が設立した3Dプリンターの研究施設 NAMII とは? (3Dwave.より)