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「株式会社デンタルアクト」を見学して

第40回神奈川歯科技工ネット研究会レポート

株式会社 デンタルアクト見学会報告

 

「株式会社デンタルアクト」を見学して

 

レポーター:傳寳弥里( アルモニア 代表 )

 


 

P1070165.JPG去る2014年1月17日,当研究会の恒例であるラボ見学会が開催された.今年は大和市にある株式会社デンタルアクトを見学させていただいた.

 

当日は深々と冷え込む寒さの中,18時45分の集合時間の一時間前に集合場所に着いた参加者もいるなど恒例の見学会を皆,楽しみにしているようであった.

 

見学先の社員の方々が最寄り駅まで車で迎えにきてくださり,まずは桜ヶ丘技工所へ向かった.

 

株式会社デンタルアクトは中野 等氏(写真左:以下,中野社長)が1980年,横浜市戸塚区に設立した「有限会社デント」から始まる.当時は歯科材料,医薬品,歯科機械の販売を行なう会社であったが中野社長は販売店の限界を感じ,歯科医院や歯科技工所の経営を試みた.しかしなかなか思うようにはいかなかったという.1984年,歯科技工物の請負の会社「有限会社インレーセンター神奈川」を設立した.宅配便が動きだした時期でかなりの量の取引を九州との間で行っていたという.仕事が順調に増えていく中,技工物の修理依頼の対応を思案していた時に山室拓也氏(現 専務取締役)が営業として入社.歯科技工士である山室氏が入社したことにより,請負から自社生産に切り替えていくことにしたという.

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その後,「有限会社デント」と「有限会社インレーセンター神奈川」を合併し,「株式会社デンタルアクト」を設立.歯科技工業務と歯科に関わる材料等の販売を行なっている.現在では大和市に本社ビルおよび桜ヶ丘技工所があり業界9位の売上高を誇る.

 

小田急線桜ヶ丘駅より,車で10分ほどで桜ヶ丘技工所に到着した.閑静な場所でひときわ目立つ技工所の照明の明るさが会社の活気を表しているように感じられた.歯冠補綴を製作している桜ヶ丘技工所にはクラレノリタケデンタル(株)のCAD/CAMシステムが導入されている.一室に刀(カタナ)システムのCAD/CAMの全てが収まっており,2台のシンタリングファーネス機が切削機と並んでいた.システムの全ての機器が揃っている技工所はなかなか少ないであろう.ちょっとしたショウルームのようである.それに加え,特筆すべきは棚にあるジルコニアディスクの在庫の多さに驚いた.二階にはイボクラールビバデント(株)のe-maxシステムが揃っていた.リングファーネスが二階に見当たらず,参加者がどうしているのかと質問すると一階から加熱されたリングを持って階段を登ってくるとのことであった.驚きである.筆者なら,慌てて落としてしまいそうである.

 

桜ヶ丘技工所はDental CAD/CAM室,e-maxを含むポーセレン室,天井が高く大きな模型作り作業と鋳造作業の部屋,そして一般の技工机の並んだ作業室の大きく4部屋で構成されていた.

 

見学を終え,また車に乗り込み約10分.本社に移動した.市街地の大きな建物が並ぶ中に本社ビルがあった.こちらは営業の拠点になっている.一階にある事務室に入ると大勢の営業マンが出迎えてくれた.……一体,何人いるのであろうか.(株)デンタルアクトの企業としての規模の大きさを改めて感じた.本社ビルにはところどころに様々な美術品が飾られている.全て中野社長の指示であるという.美術鑑賞が趣味の筆者は,初めてお会いする中野社長の佇まいを想像をしながら二階にある会議室に向かった.

 

にこやかに参加者を迎えてくれた中野社長は,ご自分のこれまでの起業家としての歩みをお話してくださった.とにかくアイデアが豊富で,それを実行する行動力の高さに驚かされた.開発した商品としては歯科界初の往診車が有名である.残念ながら現在は訪問診療の形態が変わってきたこともあり,新たな生産はしていないという.アイデアは商品開発だけでなく,ジルコニアの普及を見越して既に「ジルマージ」,「ジルボンド」,「ジルパール」という補綴物の製品名の商標登録が済んでおり,登録証書が飾られていた.商標登録を取得することに考えが及ぶのは起業家ならではだと感じた.

 

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毎年,諸処のラボ見学に伺うと驚くことや新たな発見がたくさんあるが,今回の見学における一番の驚きは,中野社長と山室専務との絆の強さである.今回,中野社長は山室専務に社長の座を譲ると公言されていた.筆者は個人ラボであるが,自身が築き上げた会社を社員に譲るというのは,いざとなるとなかなか決心のつかないものであると思う.ましてや,社員数43名の規模である.どれだけの信頼関係があると任せようと思えるのか,引き継ごうと思えるのか.ただ,色々な機会でお会いする山室専務のお人柄を考えると中野社長の気持ちが少し解る気がして,中野社長にお会いしたことで,山室専務が中野社長を慕う気持ちも少し解る気がした.しかし50歳で大学に入学した中野社長である.引退はまだまだ先の気がするのは,筆者だけではないと思う.

 

見学の後,菊華飯店別館にて当研究会の新年会を行った.来期のラボ見学や特別講演の話,日常の業務のことなど様々な話題で盛り上がり,楽しいひと時を過ごした.料理も格別で紹興酒もかなりの本数が空になったようである.参加者は19名であった.

 

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最後になりましが,中野社長,山室専務はじめ,お忙しい中対応してくださった(株)デンタルアクトの社員の皆様に心からの感謝と御礼を申し上げます.

 

 

ジルマージ」 ――ジルコニアフレームの上にe-maxをプレスし,ステインで仕上

げたもの

ジルボンド」 ――ジルコニアフレームに陶材を築盛したもの

ジルパール」 ――ジルコニアクラウンをステインで仕上げたもの

 

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株式会社デンタルアクト

 

 

 

 

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